暗くて重くて引きずられる
タイトル:迷宮
著者:中村文則(なかむらふみのり)
出版社:新潮社(新潮文庫)
価格:460円(税別)
ページ数:205ページ
発行日:平成29年6月5日(初版平成27年4月1日)
この本のあらすじ
本当の自分を隠し普通のふりをして生きる男、新見。
その男が出会った女性、紗奈江は有名な一家惨殺事件で唯一生き残った少女だった。
少女は両親、兄との四人家族。
母の由利は全裸にされ、無数の折鶴によって飾られていた。
「折鶴事件」と呼ばれた未解決事件にのめり込んでいく新見。
ある夜、彼女はベッドで事件の真相を話し始める。
折鶴事件
話は「折鶴事件」が核となっています。
家は施錠され密室、少女以外の三人の家族が殺された。
平凡な夫、美しく人を狂わす妻、引きこもりの長男、母に似て美しい長女。内面に問題を抱え暴発寸前の彼らに起こる突然の悲劇。
新見は猟奇的でありながら美しい姿の被害者に惹かれ、侵入経路すら分からず捕まらない犯人に思いを馳せます。
この事件に魅了され深みにはまっていく彼は事件の真相を追いながら、人間の本質や闇をさらけ出していきます。
終始暗く重かったです。
もう少し妻の由利のことを詳しく知りたかったです。
由利は美人とはいえ、どうしてそこまで人を魅了し狂わせるのか。夫や子供をどう思っていたのか。
著者 中村文則
この本の中で一番印象に残っているのは最後の著者による解説です。
世の中の、明るさの強制や平均でないことの批判に触れ、
そんな面倒な時代かもしれないけど、小説のページを開く時くらいそこから自由になれるように。共に生きましょう。
『迷宮』について
面白い小説は、読んでいるとき何にも囚われず無心になれます。そんな作品を作り出す人が「自由になれるように」との思いをもっておられたとは。
作品は「教団X」が有名でしょうか。
全体的に暗い話が多いようです。
他の作品も読んでみたくなりました。
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