人間というものは…
タイトル:不思議な少年
著者:マーク・トウェイン
出版社:岩波書店(岩波文庫)
価格:720円(税別)
ページ数:252ページ
発行日:1999年12月16日発行
この本のあらすじ
マークトウェインといえば、「トムソーヤの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」などが有名ですが、今回はこちら「不思議な少年」です。
活発でいきいきとした作品のイメージがあったのですが、それに反して表紙のあらすじが何やら不穏だ…と興味を持ち購入しました。
1590年、オーストリア。魔女狩りが行われている時代。
美しい自然に囲まれて純粋に育つ少年達の前に、不思議な少年が現れた。
見目麗しいわ話はうまいわ特殊能力を持つわで、もう好きにならずにいられない!
すっかり夢中になった少年達に、彼は自分の名を告げる。
「サタンだよ」
サタンには善も悪もない。
動物にも善悪はない。
人間だけが良心だの道徳だの持ち合わせて、挙句どの生き物より残酷であること、人間がいかに卑しく下劣な存在であるかを、事あるごとに少年に教えていく。
言っていることは正しい
少年はサタンとの交流を楽しみながらもサタンの考え方、残酷な行為に戸惑います。
サタンは大切な友達!話すだけで胸踊るような素敵なやつさ。
しかしやたら人間をディスってくるな。言い返しても論破されるし。
その上、不思議な能力でみんなを助けてくれると思いきや、寿命を縮めたり廃人にしたり…そういうことじゃないんだよなぁ。
でも、きっと彼は正しいんだ。
少年の心情はこんな感じかな?
サタンの言うことは、人間としてはすんなり受け入れがたいけど、それが真実であることは気づいている様子です。
唯一の武器は笑い
人間のことをボロクソにいうサタンですが、なんと人間には強力な武器があることを教えてくれます。
君たち人間ってのは、どうせ憐れなものじゃあるが、ただ一つだけ、こいつは実に強力な武器を持ってるわけだよね。
つまり、笑いなんだ。
マーク・トウェイン「不思議な少年」
笑いこそが、権力、金銭、迫害などをたったひと吹きで粉微塵に吹きとばせるというのです。
ちなみに人間は、この武器を一度として使うことはなく、笑い以外の武器を持ち出してはがやがや戦っているようです。
そんな頭も勇気もないと。
大切な武器を錆びつかせていたのか…。
物語としては大きな展開があるわけではなく、終わり方も静かです。
この最後の静けさ、あっけなさが余韻を残す作品でした。
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